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第六章・4

 デート、と聞いて玲衣は頬を染め、哲哉は愕然とした。 (僕が、哲哉さまとデート!) (私が、デートなどと浮ついたことを!?) 「屋台の並びを抜けると、その先にホタルのスポットがあります。後は、お二人でどうぞ」  当然のように抜かす池崎に一睨みくれると、哲哉は歩き始めた。  後を、慌てて玲衣が続く。 「……」 「哲哉さま、怒っておいでですか?」 「いや、怒ってはいない」 「やっぱり、怒ってます……」  少し下を向く玲衣に、哲哉は声を掛けた。 「驚いただけだ。それに、思い出が俗世にまみれているので、悲しい」 「哲哉さま」  そう言えば、哲哉は子どもの頃に両親とここへホタルを観に来た、と言っていた。 (哲哉さま、大切な思い出だったんだろうな)  しょんぼりとしてしまった玲衣を見て、哲哉は反省した。 (今度は私が、この子に思い出を作ってあげる番ではないのか?)  そこで、顔を上げて周囲を見渡した。 「玲衣、何か欲しいものは無いか?」 「え?」 「買ってやる。選べ」 「は、はい」  玲衣は、慌てて露店を見た。

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