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第六章・7

 愛する、玲衣?  まただ。  私は玲衣を、愛しているのか?  答えを出せないまま、哲哉は彼の手を取った。  自然と、そうしていた。  この子と、もっと結ばれたい。  近くにいたい、その温かさを確かめたい。 (哲哉さま、僕の手を……)  そっと手を握られ、玲衣は戸惑った。  だが、それは一瞬のことだった。  すぐに、玲衣は哲哉の手を握り返していた。 「哲哉さま」 「何かな」 「哲哉さま、……好きです」  時が、静かに止まったようだった。  動くのは、宙を舞うホタルのみ。  周囲の人のささやきも歓声も、聞こえなくなった。 「私も、玲衣が好きだ。……多分」  多分。  少し、弱気な返事。  だが、玲衣はその返事を喜んだ。  哲哉が見せてくれた、初めての弱気。  そして、嫌いとは言わなかったのだ。 「哲哉さま、好きです」 「私も、玲衣が好きだ。……多分」  もう一度ささやき合った。  握った手に、少し力がこもった。  

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