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第七章 デート

 ある日の朝、哲哉は食卓のサラダを食べてうなずいた。 「美味い。今日のサラダは、ひときわ新鮮だな」  瑞々しい、ラディッシュ。  パリッとした、リーフレタス。  甘い、ミニトマト。 「食材の仕入れを、変えたのか?」  何気なく傍に控える池崎に問うと、彼はにっこりと笑顔で言った。 「実は、すべて今朝の採れたてでございます」 「ほう」  道理で、美味い訳だ。  野菜は、新鮮に限る。 「そして、仕入れ先は玲衣くんです」 「何?」  玲衣を見ると、嬉しそうに。  そして、少し照れて微笑んでいる。 「僕、嬉しいです」 「玲衣が育てたのか? この野菜を」 「はい」  聞けば、哲哉が執務の時や、絵を描く時以外は、時間を持て余す玲衣だ。 「だから、その時間に池崎さんに園芸を教わったんです」 「なるほど」  哲哉は、もう一口サラダを食べた。

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