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第七章・2

 えぐみのない、爽やかな緑の味。 「素朴だが、身に染みわたるようだ」  玲衣が丹精込めて育てたとなると、ありがたみも増す。 「美味しいよ、玲衣」 「ありがとうございます!」  フレッシュサラダはあまり口にしない哲哉だが、今朝のサラダは完食した。 (私のために、園芸を)  そう思うと、なぜだか頬も緩む。  そんな哲哉に、池崎が話しかけた。 「哲哉さま。これは玲衣くんに、御礼をしなくてはなりませんね」 「礼?」 「そうですよ。彼は、本当に一生懸命に野菜を育てましたから」  そうか、と哲哉は指を組んだ。 「玲衣、何か欲しいものはあるか?」  玲衣は、慌てて両手を横に振った。 「そんな。僕はただ、哲哉さまに何か差し上げたくて」 「遠慮するな。何でも言うといい」  池崎も、しきりにうなずいて促している。  じゃあ……。 「じゃあ。僕、また哲哉さまとお出かけしたいです」 「外出か。ホタルの時期は、もう過ぎたぞ」 「ホタルじゃなくって、ただ街を歩いてみたいんです。一緒に」  何とも無欲な、玲衣の返事だった。

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