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第七章・4

 執務の合間に池崎を呼び、哲哉は独り言のように言葉を宙に吐いた。 「そういえば、玲衣はどうしているのかな」  今日は、約束のデートの日だ。  午後から、彼と一緒に出掛けるのだ。  正直、仕事が手に突かない哲哉だったが、池崎はそのことを指摘はしなかった。 「とても、楽しみにしているようですよ」 「そうか」 「来ていく服の、コーディネイトを任されました」 「ふぅん」  哲哉さまは、と池崎は少し首を傾げて見せた。 「どのような服装で、お出かけですか?」 「スーツだが」 「デートにスーツ、ですか……」 「反対か?」  止めはしませんが、と池崎は溜息混じりだ。 「18歳の少年とデートに、スーツ姿では少々固いか、と」 「では、どうしたらいい」 「もう夏ですから、爽やかなサマーニットでカジュアルに」 「解った。そうしよう」  玲衣との、二度目のデート。 (失敗の無いようにしなくてはな)  ひとつ頷き、哲哉は執務に戻った。  戻ったが、頭の半分はデートのことが巡り巡っていた。

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