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第八章 遠雷
哲哉と玲衣の、二度目のデート。
書店から出た玲衣は、おずおずと哲哉を見上げた。
「哲哉さま、あの……」
「何だ?」
「カフェに、寄りたいのですが」
「カフェ? 邸に戻れば、池崎がカフェより美味いお茶を淹れてくれるぞ?」
はい、と玲衣はうなずく。
だが、重ねて言うには。
「哲哉さまと、外でお茶を飲んでみたいんです」
「変わった子だな」
まあいい、と哲哉は手近な店に玲衣と入った。
全国にチェーン店を展開するそのカフェは、賑やかだ。
老若男女、さまざまな人間でいっぱいだった。
「繁盛しているのだな」
「有名チェーンですから」
玲衣を見ると、目を輝かせている。
(まあ、18歳の少年は、こういう所が好きなのだろう)
哲哉はぼんやりメニューを眺める。
やたら長い名前のドリンクが、目に入る。
「コーヒーは? キリマンジャロはないのか」
「哲哉さま、ごめんなさい。純喫茶ではないので、ありません」
仕方がないな、と哲哉はエスプレッソを注文した。
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