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第八章・2

 二人で席に着き、互いのドリンクを眺める。 「哲哉さまは、やっぱり大人ですね」  まだ、コーヒーには砂糖とミルクを入れないと、飲めない玲衣だ。 「そういう君は、何を頼んだんだ?」 「トロピカル マンゴー パッションフルーツ & ティー、です」 「欲張りな名前だな」 「おいしいですよ」  よかったら味見を、という玲衣に勧められ、哲哉はその長い名前のドリンクを口にした。 「うん、美味い。ジューシーだ」 「良かった!」  そのティーを哲哉から受け取り、玲衣は無意識にストローに口を付けた。 「あ」 「何だ?」 (これって、間接キス!)  夜には、濃厚なキスを交わしているのに、玲衣はそれが新鮮だった。  やけに照れて、恥ずかしく。  甘酸っぱい心地が、胸を浸した。 「あ。あの。何でもありません」 「そうか」  哲哉は、ただ淡々とエスプレッソを飲んでいる。 (哲哉さまは、あまりこういうことは考えない人なんだな)  改めて思い、それでも彼を愛しく感じた。

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