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第八章・3

 微笑ましい二人を、遠くの席で凝視している人物がいる。 「間違いない。白石 玲衣だ」  男は、一枚の写真を取り出した。  そこには、玲衣の顔が写っている。  彼は、とある人物からの依頼で玲衣の行方を捜している、探偵だ。  闇オークションでの売買で取引された人間は、基本その行き先を出品者に知らせない。  第三者が間に入り、情報をシャットアウトするのだ。  落札者の個人情報を守るための、策だった。  ところが、玲衣の行き先を知りたがった人間が、いる。  彼の、父親だった。  探偵は、玲衣の父親に依頼され、その行方を追っていた。 「白石さん? 玲衣を発見しました。○○県中央区南町、スカイ・ショッピングモールのカフェです」 『本当か!? で、どうなんだ。そこから、連れだせそうか?』 「連れの男がいますので、今すぐには無理かと」 『後を付けて、居場所を突き止めてくれ』 「了解しました」

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