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第八章・4
通話を切り、玲衣の父はにやりと笑った。
「すぐに、俺の手に戻すからな」
父親は、哲哉からの1000万円で、借金を完済した。
その手元には、まだ高額の金が残った。
やり直すには、充分な金額だったが、彼はそうしなかった。
ギャンブル好きの悪癖が抜けないこの男は、そのほとんどを遊び使ってしまったのだ。
「玲衣がいれば、また稼げる」
父親は、玲衣にまた体を売らせるつもりでいるのだ。
傍らの、ぬるい発泡酒を飲み干し、口をぬぐった。
「可愛い玲衣。金の卵を産むニワトリだよ、お前は」
そして、その体。
息子の肢体に溺れているのは、この男も同様だった。
早く、この手に触れたい。
突っ込んで、泣かせたい。
父と呼ぶにはあまりにも非道な、醜悪な男だ。
しばらく後、再びスマホが鳴った。
『白石さん。玲衣の居場所が解りました。地方名士の、神森邸に車が入っていきました』
「御大層な場所に、住んでいるな」
『今後、どうしましょうか』
「監視を続けてくれ。連れだせそうなら、そうしてくれ」
『解りました』
玲衣に、毒牙が忍び寄っていた。
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