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第八章・5

「二回目のデートは、いかがでしたか?」 「とっても楽しかったです!」 「まあ、悪くない」  今日は留守番だった池崎は、二人の良い返事に笑顔だ。 「お茶になさいますか?」 「いや。外のカフェで済ませて来た」 「え!?」  まさか。  あの哲哉さまが、カフェに!? 「哲哉さまは、エスプレッソを頼まれましたよ」 「そ、そう」  あどけない玲衣に、池崎は感心していた。 (まさか、哲哉さまとカフェに入るとは!)  魅力的な子だとは思っていたが、この子のどこにそんな力が。 「哲哉さま。今日は、ありがとうございました」 「うん。私もいい気分転換になった」  二人のやり取りに、心温まる池崎だ。 (多分、玲衣くんは本当に無欲で。一切の媚が無いんだ)  これまでのモデルは、神森の家に来て哲哉の関心を引くことに必死だった。  心にもないお世辞を言い、しなを作った。  もちろん、そんな上辺だけの好意になびく哲哉ではない。  それに気づいた時、モデルは決まって逃げ出した。  いくら金持ちの家でも、人間扱いされないことに耐えられなかったのだ。

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