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第九章・2

「ああ、血がにじんでます」 「そんなに強く、挟んでたのか。あいつは」  玲衣は、哲哉の手のひらに、そっと口づけた。  早く、よくなりますように。  そう、心を込めてキスをした。 「ありがとう、玲衣」 「いいえ」  だが、と哲哉は彼を見つめた。 「本当にキスして欲しい所は、よそにある」 「……はい」  夏の日、夕日が沈む波打ち際で、二人は唇を重ねた。  まだ少し痛い、太陽の日差し。  それすら溶かすような、甘いキスをした。 「哲哉さま、そろそろ帰らないと」 「池崎が、心配するかな」  しかし、と哲哉は岬のリゾートホテルを見上げた。 「今夜は、あそこに泊ってもいいか」 「いいんですか?」 「私だって、もう子どもじゃないんだから」  だから、外泊くらいする。  哲哉は何げなく決めたイレギュラーだったが、池崎は驚き喜んだ。

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