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第九章・8

 体を拭き清め、パジャマを着せてやった玲衣の隣に、哲哉は横になっていた。 「好きだ、玲衣」  眠っている玲衣から返事があるはずもなく、哲哉の声は部屋の壁に染み入るだけだ。  だが、返ってくる言葉は解る。 『僕も哲哉さまが、好きです』  いつも、そう返してくれる。  笑顔で。 「いや、もうすでに、好きでは収まり切れないところまで来ているようだ」  今度、こう言ってみようか。 「愛してるよ、玲衣」  一人で、頬を染めてしまう自分が、ここにいる。 「愛は、まだ重いか?」  だが、最近特に思うのだ。  このまま玲衣が、ずっと傍にいてくれたら。  四季折々を、時の流れを、共有できたらどんなにいいか。  結婚。  この言葉を思いつき、哲哉は耳を熱くした。 「いや、そんな。本気か?」  自問自答が、続く。 「寝付けなくなってしまったな」  それでも、玲衣が横にいる。  幸せそうに、休んでいる。  そう考えただけで、哲哉の胸も温かくなった。

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