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第十章・3
「無地にするか、柄物か。千筋縞白も捨てがたい……」
本来なら、オーダーメイドを玲衣にプレゼントしたいところだが。
哲哉は、とりあえず仕立て上がっている浴衣数点を、フィッティングルームの彼に手渡した。
「着てみて、気に入ったものがあれば教えなさい」
「はい」
こんなお買い物、初めて。
わくわくと、玲衣は浴衣に袖を通した。
鏡の前の自分は、いつもと違って見える。
「何だか、カッコいい!」
哲哉に見せようと、玲衣はフィッティングルームのドアを開けた。
「あれ?」
哲哉は、やけに遠くにいる。
帯や扇子、下駄などの小物を揃えに行っているのだ。
「仕方ないや。自分で決めよう」
いろいろと着替え、悩み、唸っていると。
「もしもし。ちょっといいですか?」
ドアをノックする音がする。
「店員さんかな?」
「少し、待ってください」
玲衣は浴衣を脱ぎ、自分のポロシャツを着た。
ドアを開けると、そこには一人の男が立っていた。
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