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第十章・6

 動きやすい洋服と靴を購入し、浴衣と着替える。  レンタカーを借り、池崎からの連絡を待つ。 「玲衣。君は、一体……」 『僕、哲哉さまが好きです』  あの言葉は、偽りだったのか?  愛の日々は、まやかしだったのか? 「いや、何かわけがあるに違いない」  哲哉は、口を真一文字に引き締めた。  信じるんだ、玲衣を。  そこへ、池崎からの電話が鳴った。 「私だ」 『池崎です。玲衣くんは今、北町駅前のビジネスホテルに入りました』 「意外と近いな」 『わたくしは、どの部屋に入ったかを突き止めます』 「よろしく頼む」  哲哉は、自動車のエンジンをかけた。  玲衣の元へ、急いだ。

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