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第十一章・2

「ルームサービスを、お持ちしました」 「ああ、ご苦労さん」  ところがスタッフは、料理の乗ったワゴンをどんどん部屋に押し入れてくる。  ビジネスホテルの狭い室内の奥に、父親を押し込んでくる。 「おい、やめねえか!」  そこで父親は、息を飲んだ。  やけに背の高い、体格のいい男が、ワゴンを押すスタッフの後から入って来たのだ。 「誰だ、てめえ! 勝手に人の部屋に入ってくるな!」  ワゴンのスタッフは、背の高い男に言った。 「哲哉さま。玲衣くんは、この部屋です」  池崎と哲哉が、玲衣を救いにやって来たのだ。  哲哉は、無言でドアをロックした。  そして、怒りを抑えた声で、言い放った。 「玲衣を、返してもらおう」 「……お前、神森だな!?」  父は、探偵の調べで知った、玲衣の落札者の名を口にした。   1000万円で、ぽんと人買いをする、富豪。  玲衣を買い上げた、名家の男。  そこで、毛布を蹴って玲衣が声を上げた。 「哲哉さま!」  哲哉は、とっさに玲衣を見た。  赤く腫れた、頬。  涙に濡れた、瞳。 「貴様、玲衣に何をした!」  哲哉は、我を忘れて父に殴りかかっていた。

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