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第十二章 光ある未来
池崎からの報告を、哲哉は神妙に聞いていた。
彼が過去、モデルと称して買った少年たち。
彼らのその後を、聞き取った。
「では。今現在、不幸な子はいない、と考えていいのだろうか」
「はい。生活に困窮している者はおらず、ほぼ全員が何らかの形でパートナーを見つけています」
恋人を作った者、家庭を築いた者、額に汗して働いている者。
形はそれぞれだが、皆生きがいを持って暮らしている。
これが、池崎の出した結果だった。
「パートナーに精神的、肉体的苦痛を受けている者は? 職場で、ハラスメントを受けている者は?」
「その辺りは、大丈夫です。皆、哲哉さまで凝りておりますから」
「どういう意味だ」
「たとえ裕福でなくとも、温かい心を持った人と交流しています」
「……君も嫌味が言えるようになったか」
おかげさまで、と池崎は微笑んだ。
「慰謝料を、渡さなくてもいいだろうか」
「今の幸せを、そっと見守ってあげることが、最善かと」
「解った」
池崎は一礼すると、哲哉の部屋を出て行った。
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