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第十二章・6

「言ってみてくれ。哲哉さん、と」 「む、難しいです」 「じきに、慣れる。さあ」 「じゃあ……。哲哉さん」  うん、と哲哉はうなずいた。  何度も、何度でも。 「もう一回」 「哲哉さん……、哲哉さん!」 「ああ、玲衣。ありがとう」  二人で抱き合い、喜びを分かち合った。  こんな些細な幸せを掴むのに、ずいぶん回り道をしてきた。  だが、もう離さない。離れない。  長いこと、二人は抱き合い、寄り添い合った。  この生きている瞬間を、実感を、交わし合った。

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