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第12話 こんな感情なんて知らない
「何で泣きそうなわけ?」
顎に置いた手を目元に持っていき、泣いたのか少し涙の跡がある目の下あたりを指でそっと撫でる。
こんなこと、いつもならしない。
「・・・・・・別に、泣きそうになんて、」
「ふぅん。」
焦ったように声出して俯くのが図星を指されたってことに気づかないのかよ。
那月が泣きそうな顔はオレの調子を狂わされる。今まで感じたことのない想いで戸惑う。
「なあ、那月は・・・・・・。」
ーーーオレが好きなのか?
「オレに抱かれたいの?」
頭の中で思った言葉を出すのは躊躇われて違う問いかけをした。
驚いたかのような顔でオレを見上げる。そのまま一瞬固まって、直ぐにパッと目を逸らされた。
はは、分かりやすい奴。耳まで赤くなってんじゃん。
オレと寝る奴はお互いに利害一致してるし、適当に抱かれたい奴ばかりだから、オレの言葉で赤くなるとかはもちろんないわけで。
こういう反応されるのは新鮮。
「お前さ、可愛いのな。」
咄嗟に顔を逸らす那月の腕を掴み、そのまま部屋へ押し込み、床に押し倒していた。
何が起きたのかわからないという顔で見上げる。
「オレは恋愛に興味ない。遊びと割り切れる奴としかヤラねえ。お前はそーゆうの無理だろ。」
「・・・・・・な、何度も言われなくてもわか、」
今更状況がわかったのか、組み敷かれてる下で大暴れを始めた。
「那月。」
「な、なに、」
焦る那月が新鮮で何故だかすごく可愛く思えて、こんな感情なんて知らないしどうしたらいいかわからない。
オレはテンパる那月にキスをした。
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