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第13話
「俺、今度の土日、実家戻るけど大丈夫?樹」
木曜日の夜、寮の食堂の夕飯時だった。
「そうなんだ、大丈夫だよ。て、俊也が何を心配してるかわからないけど....」
今日のメニューはメインはミックスフライ、ひじきと厚揚げの煮物、ツナサラダ、かぼちゃの味噌汁。
「ほら」
俊也がひょい、と自分の皿から2つあった海老フライの1匹を俺の皿に移した。
「...ありがと」
こうして、よく、俊也は自分の皿から食事を分けて俺に食わせてくれる。
「....だってさ、お前、Ωだろ?そんなチビで細っこいとさ、危なかっかしいっちゃありゃしねー」
恨めしそうにそう言うと、俊也は、ザク、と小気味よい音を立て、カツレツに齧り付いた。
「....気づいてたんだ...俺がΩだって」
「そりゃ、Ωの看板、背負ってんの、てくらい分かりやすいし...俺もαだからさ」
思わず箸を止め、隣の俊也の横顔を見上げた。
申し訳ないけど、男らしいとは言えないけど端正な横顔は金髪が良く似合う。
「....βかと思ってた」
「そ?でも、αとかβとかΩとかさ、区別されんの、俺、マジ嫌い。変わってる?」
珍しく真面目な俊也に慌てて首を横に振った。
「土日、もし、なんかあったらさ、連絡先、教えたじゃん、遠慮せずに連絡しろよ」
「うん」
そうして、ようやく俺も箸を進めたものの、
「もう一度言う、なんかあったら連絡しろよ?無くても別にいいけど」
「わかった」
「お前、遠慮して連絡して来なそうだからさ。自己肯定感が欠如してんのかな、てくらい」
「....自己肯定感?」
「とりあえず、土日、俺、実家戻るけど、いつでも連絡して来い。いいな?」
「うん、大丈夫。観たかった映画のDVDがね、届いたから、それ観ようかな」
「なんて奴?」
「去年、上映された、サスペンス物、結構、話題になったんだよ」
「へー、俺、映画、疎いからなあ。今度、俺にも貸してよ、観てみたい」
「いいよ」
楽しい時間は本当にあっという間に過ぎていく。
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