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第14話

学校から寮に戻り、シャワーを浴びて間もなくして、 「樹、飯行こうぜ」 俊也が部屋を訪れた。 明日、明後日は土日で俊也は実家、金曜の夜。 俊也は食堂ではなく、中庭に続く重いドアを開けた。 「どこ行くの?俊也」 「いいから」 そうして、俊也は俺の手を引くと、一旦離し、寮を囲うブロック塀に飛び乗った。 「あ、危ないよ、俊也。それに門限....」 「ほら、掴まれ、樹」 差し出された手を握る。 「力弱えな、樹」 ぐっ、と俊也が引きずり上げ、二人でブロック塀の上。 「先、降りるから、俺に飛び乗れ」 ひょい、と潔く、俊也はブロック塀からアスファルトに着地したものの、高所恐怖症でおろおろする俺。 「ほら、ちゃんと支えてやるから降りて来い」 何度か深呼吸して、ブロック塀から飛び降りると、俊也が受け止めてくれた。 俊也の胸の中....。 不意に顔を上げると、俊也の優しい笑顔があった。 初めて俊也にドキドキした。 その瞬間、自分に嫌気がさした。 去年までは豊にドキドキしてた癖に。 「難しい顔して、どした?」 「え?ううん....」 俊也がニコッと微笑んだ。 「腹減った、なに食いたい?樹」 「え....外で食べるの?」 「毎日、寮の食事じゃ飽きるし、気分転換も大事」 俊也と並んで歩き出す。 俊也の行動力に改めて感心した。 俺には絶対、真似できない。 俊也がいるから、見ることのできる、夜の寮の外。 「俺の好きな店でもいい?」 「うん。この辺、詳しくないし、俊也に任せる」 俊也は小さな年季の入った感じの中華料理屋に入った。 「あら、俊也くん。また寮、抜け出したの?」 お店のおばちゃんとも顔見知りなんだ....。 「うん。てか、今日はツレも一緒」 おばちゃんは俺を目に留めると、 「いらっしゃい、何君?」 「あ、樹です。俊也くんと仲良くさせて頂いてます」 途端、俊也もおばちゃんも同時に一瞬、固まり、そして、同時に爆笑された。 「お前、それ、交際してます、て相手の親に挨拶する奴じゃね?」 「確かに、おばちゃんもそう思っちゃった」 俺は突然、恥ずかしくなり、真っ赤になった。

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