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第42話
「お腹いっぱいになれた?」
テーブルの上の全ての皿は空になった。
「なんか、初めて食べる味がいっぱいで....」
「そっか...ごめんね、特別な夜にしたかったから」
「あ、違うよ!とっても美味しかった、それは本当。ただ、初めての味がいっぱいで舌がびっくりしただけ」
「そっか」
ようやく、いつもの俊也の笑顔が見れた。
本当に美味しかったのは事実だし、びっくりしちゃっただけ。
「お皿、お引きしても宜しいでしょうか?」
「あ、うん。ありがとう。あ、坂口さん」
「はい。なんで御座いましょう」
「世界一、美味しいミルクティー、一杯、貰いたい」
「世界一、で御座いますか」
坂口さんが目を丸くした。
が、すぐに坂口さんはさりげなく、俺を見て。
「世界一かどうかはわかりませんが、とびきり美味しいミルクティーをお出ししますね。ホットで宜しいですか?」
「うん。ホットでお願い」
「俊也様は如何なさいますか?」
「あー...どうしよ。坂口さんオススメの珈琲を一杯」
「ええ、宜しいですよ。でしたら、コーヒーアートに致しましょう、ミルクティーもアートにしてみます。どんなデザインがお好みですか?」
坂口さんは俺に尋ねてきた。
「えっ、えーと...お任せとか、いいですか?」
「わかりました。お2人にお気に召して頂けると宜しいですが、では」
深々と頭を下げ、坂口さんが優雅な足取りで皿を引き、店の奥へと消えた。
「....ミルクティーで出来るんだ」
「多分、坂口さんのご好意じゃないかな」
そうして、
「お待たせ致しました」
と、運ばれてきたミルクティーに、わあ、と歓声を上げてしまった。
可愛いうさぎのアート。
「うさぎだ」
俊也が覗き込み、微笑んだ。
「俊也は?どんなの?」
今度は俺が俊也のコーヒーアートを軽く立ち上がって覗き込む。
「可愛い!犬!?」
「お気に召して頂けたでしょうか」
俺たちのはしゃぎように、坂口さん、なんだか嬉しそう。
「凄く、素敵です!ありがとうございます!」
坂口さんを見上げ、笑顔でお礼を言うと、坂口さんも微笑んでくれた。
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