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第43話

いざ、テーブルでお会計。 「ご馳走様。凄く美味しかった」 「左様ですか、失礼ですが...お名前は?」 「あ...葉山樹、です」 「お食事は如何だったでしょうか」 「は、はい...俊也にも話したんですが、初めて食べる味がたくさんでびっくりしましたけど、美味しかったです、とても」 「左様ですか。何事も経験ですからね」 にっこり、優しく坂口さんが微笑んでくれた。 経験....か。 そんな考え方もあるんだ。 坂口さんと会話している間に、俊也は財布からカードを差し出した。 「お預かり致します」 また、ぺこり、と頭を下げ、坂口さんがその場を離れる。 「....カード、持ってるんだ」 「ああ、うん。母親がさ、コンシェルジュのサービスも付いてたりするし、持たせてるんだ、プラチナカード」 思考が停止した。 「....プラチナカード...コンシェルジュ...?」 プラチナ、てアクセサリーとか、そんなイメージしか無かった。 「まあ、便利屋さんみたいなもん。使った事はないんだけどさ」 暫くすると、カードを返却に坂口さんが戻り、 「ありがとう、行こっ、樹」 「う、うん....」 俺たちの姿が見えなくなるまで、入り口かつ出口で、頭を下げて見送る坂口さんを見ながら、エレベーターが上がって来るのを待った。 「次、何処、行く?樹」 「え...えっと...カラオケとか?」 思いついたので口にしたが、俊也は困惑した表情になった。 「....大丈夫かな、俺」 「あ、カラオケ、苦手?」 「ううん、行ったことがなくて。恥かかせないかな、樹に。仕組みとかよくわからない、てか、全然」 苦笑する俊也に唖然となった。 「....カラオケが嫌いなのかと思った」 「行く機会がなくて。でも、歌、歌うところなんだよね?俺、音痴だし、てか、あんま、歌、知らないからなあ」 なんだか、俊也と住む世界のレベルが違うことに今更、痛感した。

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