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第44話

再び夜の街を歩き始めた、俺と俊也。 変わらず、手を繋いだまま。 土曜日の夜ともあり、飲み会なのか、団体やら酔っ払いの人もいて、確かに俊也に言われた通り、手を繋いでくれているとなんだか心強い。 暫く、歩き、不意に俊也が立ち止まった。 何事かと俊也の視線を追うとカラオケBOX。 「....社会科見学の一環にもなるし、樹の歌も聞けるし、行ってみっか」 思わず、えー!と叫んでしまい、きょとん、と俊也が俺を見下ろす。 「どした?」 「俺だけ歌うとか嫌なんだけど」 「でも、俺、音痴だよ?歌も詳しくない。クラシックは聴くけど、歌えないし童謡くらい?」 「....童謡」 「うん」 真顔で、カラオケで童謡しか歌えないだろうと言う俊也を見上げ、吹き出しそうになり、思わず口元を抑えた。 「....まだ歌ってないのに笑うなよ」 「ごめん、つい....」 そう謝るのに、笑いを堪えて声が震える。 「カラオケで童謡、歌うとか、良くある?」 真剣に聞いてくるからまた笑いそうになる。 「笑うなよw」 「ごめん、でも、社会科見学の一環なら....」 「カラオケ楽しい?」 「んー、どうかな、人によるんじゃないかな」 「樹に聞いてる」 「俺?んー、まあまあ?」 小首を傾げながら答えると、俊也は、悪戯っ子みたいに笑い、手首を掴む。 「じゃ、行くぞ、樹。わかんないとこ、教えて」 「うん!カラオケでは先輩だね」 顔を見合わせ、互いに笑い、カラオケBOXに突入。 カウンターで、会員証の手続きやら、コースや部屋などを店員さんと話していると、 「へー、最初に手続きするんだ。お会計も?」 「いえ、お会計はお帰りの際になります」 「あー、なるほど」 俊也は店員さんに尋ね、頷いた。 いざ、宛てがわれた一室に入ると、俊也の一声は、 「暗っ!」 だった。 「電気の調整だね、まず」 そうして、壁にあるスイッチを回し、電灯を調整すると、隣り合わせてソファに座った。 デンモクの使い方を教えて、後はドリンクバーだね、と言うと、 「ドリンクバー?なにそれ?」 と返ってきた。

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