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第48話

ガラスのテーブルの端に立て掛けられた、なんだか説明書みたいな、カタログみたいな数冊を俊也は手に取った。 「あー、宿泊料金とかか」 俺は別のを開いてみたら、飲み物や食事、おつまみのメニューだった。 「あ、なんか頼む?」 「さっき、カラオケでも軽く食べたよ?」 「スナックじゃん?」 「太るよ?夜中だし」 「後で筋トレすればいい。マシンがある部屋とかあるかなあ」 「さあ....」 結局、俊也は醤油ラーメン、ついでにノンアルコールのオシャレなカクテルを二杯。 ナッツとチーズ。 「で、樹は?腹減ってないの?」 「んー、減ってはいるけど」 「だったら、なんか食えよ。後で一緒に筋トレすれば大丈夫」 ....筋トレかあ、あんま気乗りしないけど。 メニューの写真を見てたら、やっぱり食べたくはなる。 「あー、なんにしよ。悩むー。カルボナーラもいいな、でも、カレーも気になる....」 「両方、頼も!俺も半分、食べるし」 そうして、リモコンで注文した。 「なんか、すげー、ハイテクだな、カラオケのときも思ったけど」 「....そう?でも....」 「ん?」 「....来たこと、あるんじゃないの?俊也」 「何処に?」 不思議そうな丸い目が見下ろしてくる。 「や、だから、....ラブホテル」 途端、俊也は大爆笑した。 「まっさかー!ある訳ないじゃん!」 本当かなあ、と思う反面、ほっとする自分がいる。 「でも、ラブホテル、かあ...センスあるよな」 「え?」 「だってさ、愛のホテル、だよ?恋人や夫婦の為のホテル。考えるよなあ」 「....恋人や夫婦の為のホテル....」 「そ。夢があるよな。だって、ここに泊まってる人達さ、みんな、恋人や夫婦、てことだろ?ロマンチックだよな」 優しく微笑んでくる俊也だけど...なんか、勘違いしてる、ような....。 「あ、映画も観れるみたいよ?明日まで連泊するか。なかなかいい部屋だし」 「う、うん」 とりあえず、頑張って笑顔で答えた。 ....もしかしたら、本当に来たことないのかも。ついでになんか勘違いしてる気がするけど...夢を壊さないでおこう。

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