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第50話

翌日の日曜日。 シャワーを浴びて私服に着替え、キッチンで紅茶を煎れ、読書の準備。 貸し出し日までに読み終わらせなきゃ。 「あ、その前に、俊也も読みたがってたな」 早く読み終えて、俊也に返そう。 たまに休み時間、俊也とクラス、違うし、いつも一緒、て訳ではないし、読んでたりするから、結構、読み進んだと思う。 テーブルの前に座り、紅茶を含む。 ....昨夜は楽しかったな。 本当に特別な夜、て感じがした。 俺には入る事も難しい三ツ星ホテルの高級レストラン。 驚くばかりの料理だったけど、坂口さんの言う通り、勉強になったような...。 そんな気がする。 ミルクティーのアートも可愛かったし、嬉しかったな。 カラオケでの俊也の童謡、本人は真剣だったけど、なんだかやっぱり笑った。 だけど、やっぱり、ピアノ習っていたからか、全く音程は外れてなんか無くて、全然、音痴なんかじゃ無かった。 ....もっと色んな曲を知ったらいいのに、とも思うけど、クラシックを聴くと言っていたし、童謡を歌う俊也も新鮮だし、今のままでいいか。 そして....。 コトン、と紅茶を注いだカップを置いた。 ラブホテルも、楽しかった。部屋も豪華で素敵だった。 全然、エッチなムードにならなかったけど、それはそれでいい。 プールで泳げなかったのも別にいい。 「....人魚姫を自由に....」 人魚姫、て、誰のことだろう....。 俺も知らない人とか、かな....。 考えてみたら、俺は俊也のことを全然、知らない。 中学のとき、好きな人だとか...。 俊也が何処の中学だったか、も知らない。 でも、それは俊也も同じだ。 俊也も俺のことを知らない。 それなのに、いつの間にか、仲良くなってた。 「....俊也って、不思議....」 気がつけば傍にいて、気づいたら、心を開いてた。 ラブホテルなのに、まだ一緒にいたい、て思う程に....。 そこまで考え、恥ずかしくなって来て顔まで熱くなり、紅茶を傾けた。 不意にドアがノックされ、開けると、涼太の笑顔があった。

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