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人魚姫
俊也と寮の部屋の前で別れ、暫く、テーブルに置いた俊也に渡された包みを眺めた。
正座をし、ふう、と息を整えて、包みを開けると二冊の本。
俊也に借り、涼太に渡した映画の原作の小説と人魚姫の小説。
目を見開いた。
まず、映画の原作の小説を手に取ると、帯も付き、真新しく、多分、俊也が購入したんだろうと思わせた。
人魚姫の小説を開くと、綺麗な挿し絵があり、思わず、その綺麗な絵に見蕩れた。
カサ、と小説から一枚の紙が落ちてきた。
拾い上げると手書きの綺麗な文字。
思わず、食入り、ゆっくり目を走らせた。
◆◆◆
ある男と人魚姫はひょんな事から出逢いました。
何故か、謝ってばかりいる人魚姫に、その男はずっと疑問を抱いていました。
どうにか、人魚姫を謝らせる事なく、笑顔だけを見ていたい、とその男は思うようになりました。
人魚姫は別の男に騙され、泣いていたようです。
その男は想像するだけで、悲しくなりました。
頑張って、その男は人魚姫を少しずつ笑顔にしていきました。
ですが、その男は不安を抱えています。
こんな自分が人魚姫に相応しいのか。
人魚姫には話してはいない事情をその男は抱えていました。
そして、また、その男はもう1つ、別の事情にも気づきました。
詳しくをその男は人魚姫に打ち明けることが出来ません。
何故なら、人魚姫にずっと笑っていて欲しいからです。
そして、願いが叶うのならば、人魚姫とずっと一緒にいたい、とも思っています。
人魚姫が望むのならば、許してくれるのならば。
その時は人魚姫を人間にして貰うよう、その男は魔女に頼みます。
いいえ、魔女も人間にしてしまいましょう。
どうして、魔女は魔女になったのか。
人魚姫もその方が楽になり、幸せになるのではないか、とその男は考えたのてす。
人魚姫が許してくれたそのときは、人間になった人魚姫の綺麗な足にガラスの靴ではなく、頑丈な綺麗で可愛い靴を履かせます。
そして、手を繋いでいつも一緒に過ごしましょう。
たまに星を見ながら。風を感じながら。太陽に見守られながら。
◆◆◆
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