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星がついたブレスレット
何度も何度も、俊也が書いたであろう、手紙のようで、でも俊也の思いの篭った、俊也なりの人魚姫の物語を読み返した。
思いがけず、とても綺麗で丁寧で、そして繊細な文字。
「....まさか、人魚姫、て....」
....俺のこと?
ある男、て...俊也?
「でも、魔女は...」
魔女って誰だろう....。
でも、きっと俺が知っている人だ。
豊...?それとも、涼太?
でも、この物語、豊らしき人物の話しが入っている、ということは....。
「....涼太」
でも、豊に口止めされ、強要され、行為をしていたはず。
あんなに泣いてる涼太、始めて見た。
ふう、とため息をついた。
それに、俊也の、許してくれるのならば、てどういうことだろう。
「....俺には話せない事情....なんだろう」
小首を傾げながら、何度も読み返した、綺麗な文字の俊也の物語を丁寧に畳み、可愛らしい紙の包みもとって置こう、と畳もうとして。
中に小さく薄い何かが入っていることに気がついた。
取り出してみると、シンプルな紙の封筒。
開けてみると、華奢な小さなキラキラな星が1つ付いた、ブレスレットだった。
「....綺麗」
手のひらに乗せ、思わず、見蕩れた。
細いチェーンも小さな星も。
「....まさか、ダイヤモンドとかじゃないよね、ガラス、だよね?」
角度を変えると、また違う輝きを見せる小さな星。
昨夜、俊也と繋いだ、左手の手首に巻いた。
ずっと見ていたいくらいに、本当に綺麗...。
「.....俊也が大好きだって言っていた星....」
鼓動が高鳴る。
嬉しい。
ブレスレットも、二冊の本も、なにより、俊也の手書きの、不幸な人魚姫が幸せになる、俊也の思いの詰まった物語の一枚の手紙も....。
「....ありがとう、俊也」
俊也は俺をいつも幸せな気持ちにしてくれる....。
ふと、思い出した。
「....この先、俺を信用してて。必ず」
「もう、繰り返さないように、俺は動くだけ。俺を疑うな、絶対に」
俺を強く抱き締めて、そう言ってくれたのに...。
「疑ってごめん、信用するよ、俊也」
泣きそうになりながら、ブレスレットに向かい微笑んだ。
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