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第56話
制服で登校前の朝食の時間。
いつもは俊也と二人で食べていたのに、目の前には涼太。
俊也の手紙を読んだから、あまり気にはならない。
涼太と俊也は笑顔で会話してるけど。
ふと。
突然、隣に座る俊也がテーブルの下の俺の手を握ってきた。
指を絡ませ、所謂、貝殻繋ぎ。
涼太に気づかれないかと涼太を見たけど、会話に夢中で気づいてない様子にホッとする。
「ところでさー、樹」
「はいっ!?」
思わず、飛び上がりそうになり素っ頓狂な返事をしてしまった。涼太が怪訝な丸い眼差しで見つめ、そして屈託なく笑った。
「なに、ウケるー、寝ぼけてた?」
「う、うん。昨日、あんま寝つけなくって」
「そうなんだー」
そして、俊也と繋いでいた手を離し、誤魔化すように水を飲んだ。
「あれ?」
頬杖をついた涼太が俺の手首に目を留めた。
「そんなブレスレット、付けてたっけ?」
「え。あ、う、うん。最近、買ったんだ」
「へー!」
困ったことに涼太は興味津々で俺の腕を掴み、まじまじとブレスレットを眺め、ヒヤヒヤした。
「すっごい、綺麗!何処で買ったの?」
「え、えっと...」
「あ、もしかして、前に俺が教えた通販サイト?」
思いがけず、俊也が助け舟を出してくれた。
「う、うん、そう」
「いいじゃん。似合ってる」
にこっと俺の手首のブレスレットを見て、微笑んだ。
優しい瞳が俺の瞳とぶつかり、ドキッとした。
「えー、なんてサイト?俺にも教えてよ、俊也」
....いつの間にか、俊也くん、だったのに、呼び捨てになってる。
「別にいいけど?」
「やったー!」
一瞬、ふう、と小さく俯き気味に俊也が小さくため息をついた。
「どしたのー?朝からため息とか」
「あ?あー、だりーな、て思っただけ、今日の小テスト」
「あー、わかるー!休みたくなるよね!」
「かなりな、つか、もう行こうぜ。遅刻する」
そうして、三人で寮を出て、登校。
涼太は真ん中で、俺と俊也によく喋りかけ、俊也は笑顔だけど。
なんだか、俺に向ける笑顔とはたまに違う、たまにそっぽを向いたり、話しを逸らしたり。
豊との三人とはかなり違うものに感じた。
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