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第57話

昼休みも、涼太はついてきた。 俊也が誘った、て様子でもないみたい。 二人のやり取りを見ながら、チビで買い損ねかねない俺の為に俊也が買ってくれたパンを食べた。 たまに涼太が俺に話しをふってくる。 なんて返せばいいかわからず、相槌をうったり、そうだね、と話しを合わせるだけ。 夕飯前、突然、俊也が部屋に来た。 「外、行こ。樹」 「えっ?でも、涼太は....」 「いいから、ほら」 俊也は俺の手首を掴み、引き摺るように中庭に向かった。 もう夏に差し掛かってる。 「風が気持ちいいな」 「うん。俺も思った」 気が付けば手を繋ぎ、中庭を歩いてる。 そして、また、先に俊也がブロック塀に飛び乗り、俊也が差し出す手を握り、夜の寮の外側へ。 俊也からもらったブレスレットが揺れる。 「なんか、ロミジュリみたい」 俊也がおかしそうに笑う。 「ロミオとジュリエット?」 「そう。知ってる?」 「映画では観た」 「前、行った、中華料理屋でOK?それとも他の店にする?」 「んー、俊也に任せるよ」 「なに食べたい?樹」 「うーん、なんだろ....和食?」 「了解。少し、歩くけど、平気?」 「平気」 そうして。 今夜、俊也が連れて行ってくれたのは大衆食堂。 店に入るなり、いらっしゃい!と、威勢のいい、おばちゃんが出迎えてくれた。 これまた、俊也は常連なのか、顔見知りみたいだ。 俊也は焼肉定食、俺は刺身定食にした。 お刺身だけでなく、天ぷら、ミニうどんとご飯、小鉢もついてて、美味しかったし、ボリュームも満天。 食べ終えた後は寮に戻り、暫く中庭で過ごした。 ベンチではなく、以前、俊也がハンバーガーを頬張って座っていた原っぱに足を投げ出し座ると、俊也は俺の膝枕で横になった。 「良かった。サイズが合って」 ブレスレットを付けた俺の手首を握り、俊也が言う。 「店頭でもなく、コンシェルジュに頼んで、オーダーメイドで作って貰ったけど、多分、これくらいかな、て。手首の細さ、思い起こしながらだったから」 「そうだったんだ」 俊也の優しい笑顔が眩しい。 そして、嬉しい。

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