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第66話
そうだ。
俺....いつも涼太に謝ってた。
小2で豊が引越してきて、それで、豊と仲良くなって....。
「近くに?紹介して、樹」
「いいよ」
互いに笑い、涼太に豊を紹介し、会わせた。
豊の前では、明るくて、社交的で。
だけど、俺が豊と長話ししてたり、二人きりで遊んでるのを見かけると、
「僕も仲間に入れて!」
しばらくはそうして、涼太も一緒に三人で遊ぶ。
でも....
「ちょっといい?樹」
と、涼太は俺の手を引いて....
「あんまり豊と喋らないで!」
「豊とくっつきすぎ!」
「いつまで豊がいるの!?」
「また豊いるじゃん!豊が好きなの!?」
豊にも誰にも見つからない場所で怒鳴られる。
俺より涼太は背丈もあるし、怒ってるときの顔も声も怖くって....。
「......ごめんなさい、涼太」
その度、いつも、涼太が気が済むまで謝った。たまに泣きながら....。
「ようやく、思い出した?」
「うん」
「....でも、本当はわかってる。諦めなきゃなのかな、て。中1のバース判定で、俺、Ωだったから....諦めなきゃいけないのかな、て。小1のときのあの約束、嬉しかったのに....」
肩を落とし、泣きそうな涼太を見つめた。
小1のときの....約束....。
「ねえ、樹」
「どうしたの?涼太」
「あのね」
「うん」
公園に生えていた草花の花束。
「大人になったらね、僕と結婚してくれる....?樹とならきっと温かくて優しい家庭が作れそうだから」
照れくさそうに、真っ赤な顔で、涼太はプロポーズしてくれた。
「うん、いいよ」
「本当に!?良かったー!」
嬉しそうな涼太の笑顔....。
「ごめん、涼太....」
俺は豊と知り合って、涼太が怖くなり、その記憶を消し去った。
ぽろぽろと涙が零れた。
「....樹」
俊也が声を掛けた。
「理想の家庭が、優しくていい子な樹となら作れるかな、て勝手に期待してたんだ」
「涼太。豊に聞いた。第二志望の高校は全寮制じゃないのに、寮、希望してた、て...」
「うん。幼い頃から虐待、受けてきたの。父親から。Ωの判定がわかってからは性的虐待に変わったけどね」
切なく笑う涼太に釘付けになった。
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