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第67話

「....笑うなよ、涼太」 豊が困惑気味に涼太に声をかけた。 「だって笑えるじゃん!初めてが大嫌いな父親なんてさ!」 そう笑い飛ばした瞬間、豊は涼太を抱き締めた。 「....笑うなよ、頼むから」 豊の切ない声に、豊の腕の中で、しばらく、涼太は呆然としていたけど、顔をクシャッとさせて笑いながら、無言で涙を流してた。 「....ごめんな、涼太」 「仕方ないよ。わかってる、本当は。でもさ、認めたくなかったんだ...俺、絶対にαになるって、そしたら、そしたら、樹と幸せになって、父親からも....」 「....辛かったんだな、涼太」 俊也が小さく低く声を掛けた。 涼太を気遣ってるのが、伝わる....。 「涼太、あのね。俺、俊也のこと、好きだけど....大好きだけど....付き合わないから」 途端、泣いてるのに、涼太は笑った。 「バッカじゃないの。好きなら付き合いなよ。同情とか、マジ嫌いだから」 「....てか。そもそも、俺が樹に受け入れて貰えるか分からないけど」 俊也の横顔を見つめた。 「....俊也の話し、聞かせて、俊也....」 俊也が俺を向いた。 優しく、穏やかな眼差し....。 ずっと見ていたいくらい、愛おしい。 「何処から話せばいいかわからないけど....二人は知ってるよな、俺の父親。うちの父親さ、結構、有名な病院の院長なんだ。芸能人も御用達な、さ。ワイドショーのコメンテーターとしてもさ、毒舌で、賛否両論ある、厄介な親で」 ぱちぱち、瞬きを繰り返した。 俺を真っ直ぐに見つめ、儚げに微笑む俊也。 「そんなんだから、子供の頃から学校でも周りがうるさくて。芸能人と会ったことある?だとか、しつこい奴もいれば、中にはインチキの医者の子供だとか、芸能人がうちの病院で亡くなったら殺人犯、て言われたり」 俺も、涼太も豊も、言葉にならず、優しく微笑みながら語る、俊也を呆然と見つめた。

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