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第74話
「そんな....俊也のせいじゃ....」
「同じことを言ってくれた子がいた。クラス中、いや、もっとだけど、俊也くんが殺したんじゃないし、俊也くんはなにも悪くない。お父さんも悪くない、病気なんだよ、て。その子は学級委員してて、明るくて、優しくて」
俺を見ているのに、何処か遠い眼差しの俊也の瞳。
儚げな優しい微笑みに目が離せなかった。
「ある意味、いじめみたいなもん。俺を助けたせいで、対象が俺からその子に移ったんだ。上履きや椅子とか捨てられたり、机に花を置かれたりもして...俺も一緒に上履きとかは探したりしたんだけど、その子の命まで助けられなかった」
「それって....」
「自殺したんだ。校舎の屋上から飛び降りて」
静かに語る、俊也をみんな固唾を呑んで見つめた。
「本当に殺人犯になった。その子はさ、大好きなお祖母さんが癌で亡くなって、それで、将来、看護師になりたい、て夢を抱いてて。俺に色々、尋ねてきたりしてたのに。その子の夢も奪った。冷たくしていたら...その子は死なずに済んだのに」
「....好きだったの?その女の子のこと」
「うん。死にたくても俺は死ねなくて。その事件があってから、中3まで、ずっと、家に閉じ込められてたからさ、間違いがあったらいけないだとか。間違い、てなんだよ、て話し」
「....俊也が後追いしそうなのを気づかれたんだね....だから、全寮制....?」
「単に自宅で死なれるより、高校で、てことだと思うよ。問題を学校に擦り付けられるから」
言葉を失った。
俺も、涼太も豊も。
「....なんだか、納得した、ちょくちょく、外に行くのはずっと、自宅にいたから....カラオケも知らなかったこと....それにプラチナカード....」
「うん。死に損なった。樹に出逢ったから」
俊也がにっこりと微笑んだ。
「樹が謝るたびに、あの子が泣いてる気がして。俺が守ってあげなきゃ、俺が笑顔にしたい、て、そう思うようになったんだ」
俊也の真っ直ぐな瞳が....やっぱり、眩しくて。俊也を抱き締めたい衝動に駆られた。
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