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第69話

「あー!なんかずっと話し聞いてたけど、ムカつくなー!俺がその場にいたら、俊也の周りの奴ら、全員纏めてぶん殴るのに!延長しよ、延長!」 涼太は怒り心頭な様子で、ぷんぷんしながら、壁に備えつけられた受話器に向かう。 「冷たくしていたら死なずに済んだ、て俊也、言ったけどさ。もし、俊也がその子を冷たくあしらってたらさ、他の奴らみたく、性格悪くなって、もしかしたら、看護師の夢もその時点で無くなってたんじゃないかな」 豊が正面に座る俊也に語りかけた。 「俊也のせいじゃないよ。ずっと自分を責めてたのかもしれないけど。その子とは付き合ってたの?」 「いや、その子にはさ、他に好きな人がいたから...。その相談にも乗ってた。俺、当時、誰とも話さない陰気な奴でさ。話すのがだるかったから。そいつはサッカーやってて、明るくて、周りから人気者で」 不意に、延長してきた!と涼太が戻り、豊の隣にドン!と勢いよく座った。 「そいつはお前のことをなんも話したりしてはなかったの?他の奴らみたいに」 「え?あ、どうだろ...気にとめてなかったから....」 「案外、そいつも俊也の悪口、話してたんじゃない?その子をいじめてたのは誰?」 「.....それは」 俊也が顔を伏せた。 多分、俊也が片思いしていたその女の子の好きな相手...その子にそのサッカーしていて明るい人気者な男の子も加担し、いじめてたんじゃないか、と閃いた。 「....あの子には気づかれないように、誰なんだろうな、て話したけど....」 「その子が傷ついたのは、好きな男の子からいじめを受けていたから、なんじゃないの?俊也」 俯いたまま、小さく語る俊也に声を掛けると、俊也は顔を上げた。 「俊也のせいじゃないよ、きっと。そんな気がする」 「そう....なのかな」 珍しく不安げな俊也の瞳。 きっと、ずっと一人で抱え込んで。 ずっと明るく振舞っていたのかな。 そう思うと悲しくなった。

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