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第70話

「お腹空かない!?なんか頼もうよ!今日はいっぱい歌いたいし!歌ったらさ、なんかすっきりするじゃん!?」 空気を変えるように、涼太が明るくメニューを片手に言った。 「だな。こないだ、初めて、樹とカラオケ行ったんだ。歌う、て気持ちいいんだな」 「カラオケ、行ったことなかったの?マジで?」 涼太も豊も真ん丸な驚いた目で俊也を見る。 「うん。変、かな」 「いいんじゃん!?別に!高校デビューみたいなさ!俊也の歌、聴きたいかも!俺も歌いたいし、ほら、みんな歌お!」 俊也は童謡を熱唱し、暫く、涼太も豊もやっぱり驚いていたけど。 「懐かしいな。なんか耳に優しい感じもするし」 「だね。なかなか悪くないかも!童謡も!」 不意に、困惑した顔の隣の俊也が、 「最近の曲とか覚えなきゃ、て思ったんだけど、時間がなくて」 「そういや、俊也、クラシック、聴いてるみたいだもんな」 「うん。なんか落ち着くから」 「別にいいと思うよ?俊也。無理に最近の曲 、覚えたりしなくても。....ありのままで」 俊也が教えてくれた事。 「素の自分でいていいんだ、て俊也は気づかせてくれた。真似しちゃった」 肩を竦め、笑顔になった。 一瞬、きょとん、とした俊也も笑ってくれた。 「俺の笑顔だけ見ていたい、て俊也は言ってくれた。俺もね、俊也の笑顔だけ見ていたい」 気持ちを吐き出す、てなんだろう...清々しい。 自然と涼太も豊も笑顔になった。 不思議。 笑顔って、感染するのかな。 「....樹が好き。でも、いいのかな、俺....。樹を傷つけたりしないかな」 「俺も、俊也が好き。俊也がたくさん、笑顔にしてくれるから。嬉しい、て気持ち。初めての気持ち。色んな気持ちを俊也は教えてくれる。ずっと一緒にいたい」 素直な気持ちを打ち明けてた。 俊也は困惑するかな....不安だけど。 俊也は微かに微笑んでくれた。 「俺、泡になんかならないよ。それに、人魚姫なんかじゃない。ずっと前から人間だった。魔女なんかいなかった」 ぱちぱち、俊也が瞬きを繰り返した。 そんな俊也が愛しくて。大好きで。 ....言葉にならない。

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