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第79話

俊也はどうも顔見知りらしい、タクシー会社に電話をしていたけど。 表に止まっている、俊也の言うタクシー、に俊也を除く、全員が目をまん丸にして口まで開いた。 普通のよくあるタクシーかと思いきや、そこに止まっていたのは映画で観た、て程度のリムジンだったから。 「4人だと窮屈だろうし、知り合いのタクシー会社のおじさんにお願いしたんだ」 リムジンのドアの前には正装した男性が既に立っていて、 「お待たせ致しました」 と、頭を下げ、ドアを開けてくれる。 「ほら、みんな乗りなよ」 笑顔で俊也は俺たちをリムジンの後ろに唆す。 初めて乗る、リムジン。 俺も思わず、その広さにきょろきょろしてしまうけど、涼太だけじゃない、豊も初めてらしく、物珍しそうに車内を眺めてる。 「3時間くらいかかるらしいからさ、映画も観れるよ、樹。なにか観る?」 突然、話しをふられ、俊也の笑顔に思わず頷いた。 なんだか、頭が真っ白で。 テキトーに選んだラブストーリー物の洋画が流れる車内は、飲み物や軽食まで用意されていた。 「本当はお酒でも飲みたいな、とか思ったけど、未成年だしさ。とりあえず、ジュースで。お菓子もテキトーに買ってきてもらったから」 豊の耳元で、コソッと、 「リムジンのレンタル、て幾らくらいするの...?」 小声で恐る恐る尋ねた。 「や、俺もわかんないけど、ちょっと調べてみる....会社にもよるみたいだけど、約5万円くらい...?もしかしたら、もう少しするかな、わからないけど」 すぐさま、豊がスマホで調べてくれたけど。 つい、豊とコソコソ話しになり、涼太の視線が気まづい。 特に、何も言っては来ないけど、気になってはいるのは確かだ。 「ほら、樹の好きな紅茶も買ってきてもらってたんだ。ストレート、ミルクティー、アールグレイもあるよ」 にっこりと俊也は微笑んだ。 何故だろう...至れり尽くせりで大金を払う俊也がなんだか、少し怖い。 いつもの明るくて優しい笑顔に変わりはないのに...。

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