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第80話

「ね、ねえ、俊也」 「うん?」 氷の入ったアイスコーヒーのグラスがカラカラと音を立てる。 「その、今度さ、一緒に走らない?最近、走ってないなあ、て思って」 「走る?走るって?」 同じく、アイスコーヒーのグラスを片手に豊が尋ねてきた。 「あ、うん。俊也ね、たまに寮にある中庭、走ってる、て以前、聞いて。俺も走ってみたんだけど、凄く楽しいというか、スッキリした気分になるんだ」 「あー、なるほど。中庭、なかなか広いもんな。涼太も走る?」 途端、クッキーを片手に、えー!?と涼太が素っ頓狂な声を上げた。 「やなんだけど、走るとか。汗かきそうだし、疲れそう」 「や、夜は涼しいし、気分転換にいんじゃね?」 途端、涼太は、そっかな、と視線を落として肩を竦め、クッキーを小さく一口齧った。 そうこうしているうちに、どうやら、コンシェルジュが手配してくれた、コテージに着いたみたい。 俊也はカードで支払い、リムジンを降りた後は運転手となにか立ち話をし、ビニール袋をいくつか渡されていた。 「さ、行こ」 草原にある木造で出来た、大きなコテージは隣からはかなり離れていて、まるで隠れ場みたいで、本当に穴場なのかもしれない。 受付は既にコンシェルジュが済ませていたらしく、すぐにみんなでコテージに入った。 洋風でとても広く、二階建てだった。 確かにキッチンもあるし、大きなソファとテレビもあった。 「すっげー、普通に住めそう」 「なん部屋あるんだろ?」 豊、涼太が興味津々だ。 俺の目に飛び込んだのは大きなテレビ。 もしかしたら、昨夜の俊也のお父さんの病院で起きたニュースがまだ、流れてるかもわからない。 絶対に付けないようにしないと。 俊也に見せないようにしなきゃ。

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