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第87話

「ほら、樹も肉食べろ」 今は昼前。 コテージの外でバーベキューの最中だ。 タレの入った器に隣に立つ俊也が焼いたばかりのお肉を入れてくれる。 野菜もピーマンや茄子、玉ねぎに人参。 網の上にお肉と一緒に並び、ひしめき合ってる。 正面に立ち網の上の食材に箸を伸ばす涼太、心無しか元気がないような...。 まだ眠たい?訳はないだろうし...。 「美味しいね、涼太」 話しかけてみると、笑顔になり、 「そうだね」 と答えてくれるけど。 「ほら。お前も肉食え、肉」 涼太の隣に立つ豊が涼太の持つ器に、これでもか、と肉を入れ、お肉で大盛りになったお皿を見て、涼太が唖然としてる。 「お、お肉ばかりじゃ偏って、け、健康に良くないんだけど!」 真っ赤な顔して、豊から肉で盛られた皿を見つめ瞬きもせず涼太が怒鳴る。 「ちびちび食べてると肉無くなるぞ。ってか、俊也、この肉、絶対、国産だろ。柔けーし、口ん中で溶ける」 「俺も思った。こんな美味しいお肉をバーベキューに、てなんか勿体無いね」 「俺はテキトーに頼んだだけだけど。みんなが美味いならいいや」 隣の俊也が屈託なく笑い、俺まで笑顔になる。 「しっかし、天気もいいし。バーベキュー日和だな。夜は手持ち花火だろ?すっげ、楽しみ」 「手持ち花火!?」 突然、豊の隣で黙々と静かに食べていた涼太が豊を見上げ、声を上げた。 「らしいよ。な、俊也」 「うん」 バーベキューも楽しいし、美味しい。 夜もまた待ち遠しい夜になりそうだ。

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