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第88話

夜まではみんなでコテージに置いてあったUNOやトランプをして過ごした。 絶対にテレビは付けない。 そして夜。 山沿いにあるってだけあり、真夏なのに夜は涼しくて心地良い。 俺も、俊也も涼太も豊も軽装で、手持ち花火を楽しんだ。 この夏、初めての花火。 「めっちゃ綺麗。ね、俊也」 「うん」 暗がりを彩る花火を互いに持ち、笑顔になる。 涼太や豊も、 「わっ、綺麗」 「夏って感じするなー」 二人とも楽しそう。 「樹がさ、あの中華料理屋で言い出してくれて良かった。星が見たいって」 「星....」 「うん」 手持ち花火が終わり、ふと空を見上げると、満天の星空の下にいた。 「花火だけじゃない、星空まで綺麗...」 「だな。みんなさ、あのニュース知って、気を使ってくれたんだろ?」 「....知ってたんだ、俊也」 再び、隣に同じように座り込んだ俊也が真新しい花火に火をつけた。 花火が彩る俊也の横顔は綺麗な微笑だった。 「俺、テレビ観ないし、そもそも部屋にないからさ、わからなかったんだけど、母親から連絡があって。父さんの病院で事故があって、女優さんが亡くなって。病院も自宅もマスコミがたくさん湧いてて大変だから、暫く自宅には戻ってこないように、てのと、学校までマスコミが来たりはしないだろうけど...なんか心配されて。似てるから、て」 「うん....」 あの女優さんの件は、当初は自殺と報道されたものの、遺書もなく、自殺とは断定できないとして、転落事故に変わっていることも知った。 「お母さんも...俊也のこと、心配してるんだね」 「だね。あの家で唯一、俺を心配してくれてるのは母さんかも。それと学校では樹や涼太、豊」 「うん」 消えそうになった手持ち花火の先から火を貰い、俺も真新しい花火を手に持った。 「みんなに感謝したいな」 「このコテージとかで、充分だよ。バーベキューも美味しかったし」 俺と俊也は見つめ合い、そして、互いに微笑んだ。

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