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第90話

なんて答えたらいいかわからないでいる。 「好きだよ」 って言った...? 豊の優しくて真っ直ぐな瞳から逸らせないまま...。 「....なーんてな、冗談だよ、冗談」 豊が視線を逸らし、 「花火、綺麗だな」 と会話を変えた。 その背中が霞んで見える。 「....冗談、でも。言うなよ。そういうこと....」 「....お前、泣いてる?」 「...俺と同じこと、すんなよ。俺、豊、騙して、好きって言って、なのに、俺....」 涙腺、崩壊しちゃったのかな。 勝手に涙が溢れてきて止まらない。 「俺のせいで、豊、失恋したのに、樹に....自分でも調子良すぎる、て思ってる....」 豊の大きな手のひらがよしよしするように頭を撫でてくれる。 カラオケでのあの時とおんなじだ....大きくて優しい手のひら。 「俺、俺、駄目なのに。幸せになっちゃ...いけないのに...っ」 「なんで?」 「みんなを傷つけたから、嘘ばかりついたから」 はあ、と豊がため息をついた。 やっぱりため息つきたくなるよね、俺なんか....。 「お前が、いや、俺もか。同罪だよ。確かに俺はお前に騙されたのかもだけど...幸せになってもいいか、二人に聞いてみる?」 俯いていた視線を上げると、豊の穏やかな笑顔があり、手首を掴まれた。 打ち上げ花火を見るために、樹と俊也は手持ち花火を一旦やめて、場所を移動し並んで立っていた。 「ほら、涼太」 ブレスレットの付いた手首を掴まれ、立ち上がらせられ、引き摺られるように二人のいる隣に立つことになった。 「あ、涼太。花火、綺麗だよ...て、泣いてる?」 「泣かせたのかよ、豊。最低だな」 樹と俊也の言葉に泣きそうになり、また笑いそうにもなった。 豊が悪者になっちゃってる...違うのに。 「あのさ。俺も幸せになってもいいのかな....駄目なら....」 豊には言わせなかった。 樹と俊也は同時にきょとん、となり、そして笑った。 「なにそれ?意味がわからねー」 「俺も。俺たちが決める事じゃないし」 嬉しかった。 樹と俊也の背後に見える打ち上げ花火が本当に綺麗に見えた。

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