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第91話

「....今更だけど、小一の時の約束。忘れててごめんね、涼太」 不意に隣に立つ小さな樹が困惑した顔で謝った。 「や、その事はもう....」 「涼太はさ、今、好きな人とか....いないの?」 尋ねられて、心臓が飛び出すんじゃないかと思った。 「涼太が前に言った。後悔先に立たずだよ、て...涼太がいてくれて、俺は俊也と知り合えた。幸せだよ、でも欲張りになる。もっと幸せになりたいし、幸せにしたい。俊也を。涼太はそういう人いないの?」 後悔先に立たず、か。 ....図らずも、俊也の抱え込んでいた過去を思い出した。 片思いしていた、女の子が自殺した、あの事件。 そして、あの速報...。 人って永遠なんかじゃないんだ、て俊也が一番に知っていて。そして、気づかせてくれた。 何故か隣に立つ豊を見上げてしまう。 泣いたばかりの多分、変な顔を見られてる...ダサい俺。 「お、俺は....」 は、恥ずかしい。 体の関係もあった、てのに。 それを思い出したら、また恥ずかしくて、顔を覆いたくなる。 「....顔隠して尻隠さず、だな」 「....うるさいよ」 顔を覆っていた手を外し、すうっと息を吸い込み、 「....俺、凄く変で。なんで今更、て思うのに、豊といると調子狂う....」 あー、思わず、ぶすくれる俺。可愛くないな。 樹みたいにいつもにこにこ出来たらいいのに。 「....俺も。あんなに嫌いだった筈なのに、なんか可愛いなあ、て思う...変なんだよな。いつもブレスレット付けてくれてて嬉しいな、て思ったり。...さっきの冗談は本当。好きだよ、涼太」 ....豊の笑顔が眩しい。 でも。 「....い、樹や俊也がいるところで言わないでよ、は、恥ずかしい!」 途端、みんなが爆笑した。 「すっげ、茹でダコみたいに顔真っ赤。照れてるのか怒ってるのか、わかんねー」 「もう!照れてるんだよ、俊也」 「ふ、二人もちょっと黙ってー!」 俺は思わず、その場で蹲り再び顔を覆うと、またみんなに爆笑された。 「で?眠り姫。返事は?」 「....よ、よろしくお願いします....」 変わらずしゃがみ込んだまま、消え入るような声がやっと出た。 「俺さ、友達、ていた事ないんだけど。こんな感じかな?」 不意に俊也が微かに笑った声で言った。

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