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第92話

俺と涼太は花火の後、二人でリビングのテーブルに向かい合って座ってる。 俊也と豊の姿はなく、オメガ同士、アルファ同士でのお喋りタイム、なのかな。 「良かったね、涼太」 真っ先に涼太に笑顔を向けた。 「ありがと....」 照れくささを隠すように涼太はカップのアイスに視線を落とし、スプーンでつつく。 「それでさ、涼太は今日、豊と寝るんでしょ?」 「はあ!?」 「いいなあ...俺さ、キスしかしてくれなくて...こう...唇を合わせるだけの奴。俺が子供っぽいからかなあ」 ため息をつく俺を涼太はスプーンを咥えて眺めてる。 「羨ましいなあ、涼太は俺よりおとなっぽいから...」 肩を落としつつ俺もアイスを掬うと、涼太に笑われた。 「なっ!笑わなくてもいいじゃん、涼太!」 「あ、ごめん。樹の口からそんな事が出てくるとか意外だったから...いつまでも小学生じゃないもんね、樹だって」 「そりゃそうだよ」 「俺が羨ましいって良くわからないけど...それだけ、俊也に大切にされてる、て事なんじゃないの?樹の事」 「そうなのかな...?そうだとしても、キスだけじゃ物足りない、て...エッチだよね、俺」 「んー...16なら普通なんじゃない?そのままを俊也に伝えたら?」 「そのまま、て?」 きょとん、と向かい側の涼太を見る。 「キスだけじゃ物足りないから抱いて、て」 途端、ボンッと顔から火を吹きそうになった。 「い、言えないよ!そんな事、は、恥ずかしいもん!涼太は言えるだろうけど」 今度は涼太が真っ赤になった。 「お、俺だって言える訳ないじゃん!...豊を騙して...その...してた頃はさ」 「うん」 「樹とくっつかせない為、もあったんだけど。同時進行で父親からも...その、されててさ...ヤケクソみたいな面もあったんだ」 しんみりと語る涼太はまたカップアイスを見つめ、溶けたアイスをスプーンで小さく掻き回してた。

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