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俊也side
俊也side.
豊とコテージの外でコーラで乾杯した。
「にしても驚いたわ。樹から涼太がお前を意識してると思うとは聞かされてたけど」
「なんだかんだ付き合い長いから樹にはお見通しだったんだろうな。お前がいてくれたから...にしてもコーラが美味い」
「前にさ、涼太の部屋行ったときに思ったけど、空っぽな感じでさ。お前が満たしてやれよ」
豊とは互いにアルファ同士としての会話もした。
「俺は大学出たら親父の会社に入るんだと思うよ」
「父親とは仲良いの?」
「まあ普通...お前んとこは大変だよな」
苦笑するしかなかった。
「こないだ久しぶりに実家に帰ったときにさ。好きな奴がいるから、婚約は解消にしたい、て話ししてさ」
途端、隣に立つ豊が驚き眼で俺を見た。
「婚約破棄!?婚約者いんの、お前」
「ほら、俺ん家ってさ、父方は医者一家で。医者にならないのは兄弟で俺だけだから...中学の頃に医者にならないなら、跡取りを作れ、て言われてて」
「中学の頃に...家に閉じ込められてた、てときか」
「そ。俺もさ、昔は親と同じく医者になるんだ、て思ってて。物心ついた頃から...でも、患者と仲良くなって、ある日会いに行ったらいなくってさ、亡くなった、て知るといつも泣いてた。亡くなった祖父がさ、お前は優し過ぎるから医者には向いてない、て...最初は祖父の言うことがよくわからなかったんだけど」
そう。
父親を見ていくうちにわかった。
患者が亡くなる度に泣いてたら駄目だってこと。
父親がいい例で。
患者が亡くなっても涙一つ流しはしない。
なんの為の医者なのかが俺にはわからなくなった。
患者の命を救うのが医者の役目な筈なのに、父親の頭の中は金の事ばかりだと気がついたから。
「でも、婚約は破棄したんだろ?」
「それが...相手に会わせろ、て言うんだ。樹に負担になりやしないか不安で」
「...難しい問題だな、また。でもさ、お前、ピアノ、趣味で終わらせんの?お前のピアノでみんなを笑顔にさせる、てさ、なんか治療にも似てるよな」
ピアノで笑顔に...?
思いもよらなかった言葉に、豊を見ると、豊は穏やかな笑顔だった。
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