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豊side
豊side.
俊也とあれこれ会話をし、コテージに戻ると、樹と涼太の姿は無かった。
長話しにもなったし、二人も疲れて部屋にいるんだろう。
なんとなく涼太の顔が見たくなり、涼太に宛てがわれた部屋へと入った。
ツインの一つのベッドで涼太は既に眠っていた。
「...おとなしくしてたら可愛いんだけどな」
起きていたらぶん殴られそうな言葉を吐きつつ、穏やかな寝顔を見ると、頬が緩む。
まさか、自分でも、涼太と付き合うことになるなんて、過去の自分が知ったら驚くだろうな。
涼太のベッドの縁に座り、額に掛かる前髪をそっと払った。
と、そのときだった。
「やめ...て、やめ、もう....いやだ、痛い、痛いから....」
眉間に皺を寄せて唸る涼太の寝顔に釘付けになった。
「....うなされてる....?」
「お願い....も、もう....た、助けて、父さん....」
父親から暴力を受けている夢を見ているんだろうと察した。
体の関係はあったものの泊まったりはなく、涼太がうなされる姿を初めて見て、戸惑った。
「い...やだ、やめ...て、と、父さん...」
「涼太!」
無意識に涼太を揺さぶっていた。
涼太は目を覚ましたが、俺を見るなり、目を丸くした。
「な、なんでいるの、豊」
「や、特にこれといって...ていうか、大丈夫か?」
「なにが」
涼太は自分が夢を見ていた事を忘れているようだった。
「...というか、勝手に入ってこないでよ、変態!」
うなされてたぞ、と言うべきなのかわからないまま。
相変わらずな口調な涼太に少しほっとし、寝起きの涼太の頭をわしゃわしゃと掻き回すように撫でた。
「起こしてごめん。ゆっくり休め」
「....うん」
呆気に取られた顔の涼太に微笑みを返し、俺は涼太の部屋を後にした。
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