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第103話
俊也に話しかけても、何処か心ここに在らず、て感じ。
食堂でもそうだったけど、二人きりの俊也の部屋でも...。
「俊也?どうかした?」
食事後、並んで座り、予習、復習の為に勉強していたけど、俊也は頬杖をついてひたすらボーッとして、片手でペン回ししていたから。
俊也がは、とした顔に変わり、俺に笑顔を向けた。
「悪い悪い、樹」
「何かあった?...俺にだけは隠し事して欲しくない」
はっきり言い放った。
「ん....」
伏し目がちになった俊也が薄く口を開いた。
「...お前と、その...ファーストキス済ませてて良かったな、て」
ぱちくり、瞬きを繰り返す。
「....なにそれ?誰かとしたの?俊也」
「んー...」
ふつふつと煮え切らない俊也に怒りが込み上げる。
「....和斗」
微かな声で聞き取れず、え?と小首を傾げた。
「....遥斗の兄貴の和斗....」
「えっ、か、和斗くん、てアルファだよね!?」
「あ、ん、なんか色々あって...怒んなよ。俺も好きでやってねー。事故だ、事故....でも」
じ、と俯いたままの俊也を見つめる。
「樹とするキスはこう...なんか。気持ちがほっこりする、ていうか...あったかいのに、あいつの唇は氷みたいに冷たかったな」
「....嫌だったの?」
ようやく俊也が顔を上げた。
「当たり前だろ!あいつ、俺を舐めやがって....でも、ああいう奴が成功するんだろうな、きっと....」
吐息をついた俊也を抱き締めた。
「成功とか俊也は望んではないでしょ」
俺を見下ろす優しい瞳。
「...樹には負けるな」
「負ける、てなに」
「俺の強くて愛しいオメガだってこと」
俊也が俺の頭を抱き、顔を寄せた。
思わず、俺も微笑み、なんだか軽くじゃれ合った後、大好きな俊也の優しい口付けに瞼を閉じた。
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