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第133話
母と並び、並木道を歩いていた。
不意に真っ直ぐな眼差しで歩いていた母が俺を見る。
「なにか食べて帰りましょうか?なにがいい?夕飯は眞司や広樹も一緒に...。
ああ、俊也は夏祭りだったかしら。御夕飯はどうする?」
「夕飯は祭りで食べるか、樹たちと食べるよ」
母さんがふんわりと微笑んだ。
「樹くん、だったかしら」
「うん」
「俊也が選んだ子だもの、きっといい子ね。早く会ってみたいわ」
母さんの嬉しそうな笑顔が嬉しかった。
母さんは多分、父と離婚を決めているんだろうけど...。
「でも、お昼、どうしようかしら...この辺りのお店を知らないし」
「ネットで近場のお店、探してみる。....天ぷら屋、寿司にイタリアンにラーメンに豚カツ、牛丼に...」
「天ぷら屋、いいわね」
「うん。タクシーで移動する?」
「そうね。帰宅したら浴衣、着るんでしょう?着付けもしなくちゃね。それに、涼太くんだった?俊也のお友達」
「うん」
「ある程度、わかったから。一部だけど、あなたにも渡しておくわね。子供には少々際どい内容もあるし...。にしても不憫ね、その子」
涼太の件は豊にも手伝って貰いつつ、涼太がカラオケボックスで打ち明けた後やその後も母にも相談していた。
「案外、余罪というか、あるかもしれないわね」
母はそう言い、涼太の家についてや涼太の父親についても調べてもらった。
所謂、探偵、てやつ。
母と二人きりでの久しぶりの外食で揚げたての天ぷらに舌鼓をうち、帰宅した。
スーツやネクタイから私服になり、母から渡された紙封筒を開けた。
涼太が父親から受けていた虐待、特に性的虐待を表沙汰にしないで処罰させるには他の事案が必要だった。
わかったこと。
涼太は以前、父親は貿易会社に勤務していると俺に言ったが、違った。
有名企業の社長だった。
海外に出張とし、その間、実際は海外で女性だけではなく、男女の子供を買っていた。
涼太の両親について。
涼太の幼稚園の頃に再婚していて、その約2年前に実の父親は事故で他界していた。
しばらくは母親と二人暮らしで、母親は仕事で多忙だった為に涼太は鍵っ子だった。
母親に社長だということを伏せ、貿易会社に勤務していると嘯いたんだろう。
だから母親は母子家庭の頃に勤めていた会社を辞めていないのだろう。
渡した給与以上に涼太の義父は余った金で豪遊していた。
不倫相手にもマンションを買い与えていた。
1人だけではない。
わかっただけでも不倫相手は二人いた。
黒い噂のある会社だったらしいが、脱税もわかった。
これでも一部らしい。
涼太は両親が再婚だと、その後、小学校で先に出会った樹にも、その後に知り合った豊にも教えてはない。
わざわざ教える必要がないと思ってのことだろうけど...。
数枚の胸糞悪い写真やコピーされた書類を近くに放り投げた。
そうして、母に着付けて貰い、グレー地の浴衣姿。
「良く似合ってる。あ、そうだ。写真、撮ってもいい?」
母さんは嬉しそうに浴衣姿の俺を撮影していた。
「送っていかなくて大丈夫?」
「大丈夫。夕飯、眞司や広樹と楽しんでおいでよ」
「ありがとう。あの子たち、なにが食べたいかしら...楽しみだわ」
俺も母の微笑と共に微笑んだ。
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