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第36話所有の印【2】

 ジャレッドがクライノートから教えられた契りの方法は「一時的に魔力を高める」段階まで、予想していた通りに不完全だった。  相手となる人間への魔力の流し方はリヒトとクライノートだからこそああだったわけで、印の入れ方、要は禁術のかけ方は——実際にはかかっていなかったが——リヒトにあたかもそう見えるようにうまく騙されていたのである。  ゆえにギルは「今日のところは私に任せて頂けますか?」と伝え、今の状況に至っている。 「ジャレッド様は気持ち良くなることだけを考えていて下されば」  ギルは火照ったジャレッドの肌を愛おしげに撫でた。ジャレッドは二度目の絶頂を極め、汗をかいた内腿に光の玉がつるりと転がっていく。 「そろそろ私のを挿れてもよい頃合いですね」  ギルは四本の指をゆっくりと引き抜き、ジャレッドのうなじにキスをする。 「・・・・・・あッ、ふっ、んんん」 「ジャレッド様の好きな体勢でしましょう。四つん這いのままでもいいですし、どのようにされたいですか?」  その問いに、ジャレッドはひくりと喉を引き攣らせた。  しばらく考え、おずおずと仰向けになる。 「・・・・・・こわいから、これで手を握ってして・・・・・・」  と言うも、恥ずかしいことをお願いしていると自覚があるのか、ぷいと顔を背けてしまう。 「ジャレッド様・・・・・・貴方は本当に」  ギルは小さく溜息をついた。自分の行動がどれほど男の理性を揺さぶるか、わかっていない。 「・・・・・・嫌なの? だめ?」 「いいえ、そう致しましょう」  ギルは上体を倒してジャレッドに覆いかぶさる。ジャレッドの手に手を重ねて指を絡ませると、緊張で固くひき結ばれた唇を吸い、穏やかな刺激を与えた。 「いい子ですね。深呼吸して、力を抜いていて下さい」  その体勢のまま、ピンクに色づいたアヌスにぴとりと自身を押し付ける。ジャレッドの慎ましい窄まりと、凶器じみたギルのペニスでは、その大きさの差は比較にもならない。  とても挿入できそうにない狭さだが、これからここを目一杯に拡げ、己れの欲望そのものをねじ込んでやるんだと思うと背徳感がたまらなかった。  それだけで達してしまいそうになりながら、ギルは息を止め、ズンッと腰を押し進めた。 「ううッ」  先端が入り口にめり込み、ジャレッドは苦しげな声を上げる。 「頑張りましょう、ほらここ、ジャレッド様が射精しちゃうところ」 「い、言うなッ・・・・・・あああっ」  ギルは太い充溢(じゅういつ)で肉壁を拓き、捉えたしこりを擦り上げた。大きく腰が跳ねた場所で動きを一度止め、ジャレッドが慣れるのを待ち、またじわじわと腰を進める。 「大丈夫ですよ、上手に受け入れています」 「・・・・・・ン、は、あ・・・・・・はいってる?」 「ええ、ジャレッド様のナカは気持ちがよいです」  正直にいえば、まだ三分の一ほどの挿入しか済んでいないが、ジャレッドの中はキュッと締めつけがあるのに柔らかく、湿っているのとも濡れているのとも違う、滑りけを帯びた熱い肉襞に包み込まれるのは最高の心地だった。 「動きます」  ひだが解けて絡みついてきた頃を見計らい、ギルは腰を引き、ゆっくりと抜き挿しをする。   「ん・・・・・・っ、はッ」 「痛くないですか? 大丈夫そうなら奥まで進めます」 「・・・・・・お・・・く」  ぼんやりと喋るジャレッドは、目を潤ませ、かあっと頬を紅潮させる。  熱を帯びた表情がたまらなく腰に響き、ギルは獣と化しそうな下半身をなんとか抑えつけ、慎重に、しかし深々と、ジャレッドのナカに突き込んだ。 「ッ・・・・・・あッ、ああッ、がはっ!」  ギルの肉棒は突き当たりまでみっちりと埋まり、ジャレッドは内臓を押し上げられる圧迫感に激しく咳き込んだ。  かなり苦しそうだが、こればっかりは仕方がない。 「・・・・・・苦しいですね、申し訳ありません。しかしこれで全部呑み込めましたよ、わかりますか?」 「ん、うん、おっきすぎ・・・・・・、尻が壊れる・・・・・・」  はじめての男性器の挿入で快感を拾うのは難しい。  押して返す波のようなゆったりした律動にも、ジャレッドは息苦しそうに胸を上下させる。  ・・・・・・契りも大事だが、失敗してジャレッドの身体を傷つけることはしたくない。  まだまだ時間はある、今日じゃなくても何度か試したのちでもいい。  ギルは無理をさせず、自身を入り口付近まで戻し、自身の熱をジャレッドに覚えさせることへ専念した。  だが心配はすぐに杞憂(きゆう)に終わった。  浅いピストンを繰り返していると、しだいにジャレッドはむずかるように腰をそらし、甘い声で喘ぎ始めた。 「どうしました?」 「や、なんか、奥・・・・・・指だと当たってなかったところがジンジンする」 「ジンジン・・・・・・、ここですか?」  奥と言われ、行き止まりをコツンとノックする。 「アッ、だめ・・・・・・、だめ・・・・・・」 「奥が感じるんですね?」  ジャレッドの両手首を前に引き出して固定し、ギルは強く腰を突き上げた。  ズパンッと肌を打ち付け、(みなぎ)ったペニスで行き止まりを叩く。  「ひッ! まって、だめッ、違うのくる、ちがうの・・・・・・」  奥を叩いてやるうちにジャレッドの声が明らかに変わった。  ギルは泣きじゃくるジャレッドに構わず腰を振り続けた。ごりごりとしこりを擦り上げ、奥まで貫き、深く激しく、ぎりぎりまで引き抜いて一気に串刺しにする。  やがてジャレッドは腰を弓なりに反らせ、ぶるぶると身体を震わせた。 「ンンンンんんっ!!」  歯を食い締め、声にならない声が口から漏れる。 「素晴らしいです、上手にできましたね」  ふやけた顔で手足を痙攣させるジャレッドを見て、ギルは感嘆の声を上げた。 「・・・・・・は、あ、できた・・・・・・?」 「ええ、上手にお尻だけで絶頂したのです。ジャレッド様のペニスはこのように射精していませんよ」  大きく開かせた股の中心を撫でてやると、ひくんと反応したものの、硬さを保ったままだ。鈴口の小さな孔から垂れている雫は透明で、射精したときの濁りはない。 「気持ちよかったですか?」  ジャレッドは驚いて自身の股間を見つめ、こくんと頷く。 「よかった、それならもう少し続けましょうか」  ギルは「失礼します」とジャレッドの片膝をたて、その間に身体をいれた。体重をかけ、ぐりぐりと奥を押し上げる。 「ああっ、や、・・・・・・すごい・・・・・・ふかい」 「ここが好きなんですよね。貴方の奥の奥が降りてきて、私のペニスにキスしているのがわかりますか? ジャレッド様の下の口はとてもはしたなくて、いやらしい」  熱っぽく囁くと、ジャレッドの後ろがきゅううと締まった。  ギルは意地悪くにやりと笑う。どうやら吸い付いてくる最奥のそこは、上の口より素直でもあるようだ。 「可愛い、ジャレッド様」  ギルはうねる隘路(あいろ)をこじ開けながら腰を振った。  繋がった箇所で香油が泡立ち、ベッドの周りにダイヤモンドの熱気が立ち込める。 「あ、いい・・・・・・、あッ、あー、きもちいい」  ジャレッドはガクガクと揺さぶられ、うっとりと嬌声を上げた。  じっとりと汗ばんだ肌はもう充分に艶めいて輝やかしい、・・・・・・これだけ感じていれば、もういいだろう。 「ジャレッド様、これから仕上げをします」

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