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第43話春に向けて【4】
「いいですよ、わかりました。必ず伝えます」
そう了承を伝え、ジャレッドは「それではごきげんよう」と優雅に会釈をした。
はやくこの場を離れてやらないと、ギルのポーカーフェイスがもちそうにない。
広場を出たギルはいつものようにジャレッドを警護しながら前を歩いた。それでも感無量の思いを抱えているはずで、どこか上の空な足取りなのが見て取れる。
なんとなく自分も嬉しくなりながら、ジャレッドは邪魔しないように後ろを歩いていた・・・・・・のだが、ギルが当然足を止めた。
間もなくジャレッドが追いつき、「ギル?」と顔を覗き込んだ瞬間に腕を強く引かれ、建物の影に引き込まれる。人から見えなくなると、ぎょっとしてる間に大きな身体が覆い被さり、ぎゅううっと痛いほど強く抱きしめられた。
「あ、ちょっと・・・・・・ッ、おいっ」
ジャレッドは潰されそうな圧迫感に喘いだ。
ここはさっきの裏路地だ。カフェのパラソルが目と鼻の先に見えていたのに油断していた。
すっぽりと抱きすくめられ、思うように身動きがとれない。大声をあげるのも憚られ、ギルの気が済むまで好きにさせるしかなかった。
特にどうする様子もなく、しばらくギルはジャレッドを包み込んでいた。鼻先を擦るようにジャレッドの頭に顔を寄せ、髪に顔を埋めている。自分の匂いを吸われているのかと思い、恥ずかしさがよぎる。
けれど実は甘えたがりな男の素の部分が愛おしくて、「やめて」とは言えずに、ジャレッドは抱きついてくるギルに自分自身も腕を回した。
「・・・・・・俺のために街に来たはずなのにな、よかったじゃないか」
背中をさすってあげているうちに、ギルはジャレッドの黒い髪に唇を擦り寄せ始めた。髪の層を通して伝わる優しい刺激に、否応 なく気持ちがふわふわしてくる。
こめかみにキスを落とされ、順に下へくだり、耳元に熱い息がかかった。
「ジャレッド様、抱きたい」
熱っぽい声にどきりとする。
しかし予感はしていたからか、さほど驚きはしなかった。一応「帰ってからと言っていたはずだ」と拒絶を示すも、それはもう形だけのものだ。
「帰ってからもしますけど、今ここで抱きたいのです」
言い終わるのも待てないと、口付けが嵐のように降ってきて、ジャレッドは唇を奪われる。
目を覆いたくなるほどに情熱的な求愛には、到底抗 えそうにない。
「・・・・・・ん」
甘やかなキスをジャレッドに与えながら、ギルの手は着衣の上をたどった。乳首を捉えられ、フニフニとさすり、刺激に立ち上がったそこがコロンと豆粒みたいに浮き上がる。
「あ・・・・・・、んん・・・・・・そこ、や、声でちゃうからあ」
「それでは頑張って抑えないとですね」
ギルはジャレッドのトロけた顔に目を細め、意地悪く乳頭を押しつぶす。
「・・・・・・うンンッ・・・・・・やあ」
次いでボタンを外そうとするのでジャレッドは慌てて手を掴んだ。
「あ、それはだめだ、下だけ少しずらせばできるだろ・・・・・・っ」
「子どもらはこれからオブジェ作りをするのでしょう? 今度こそ誰も来ません、ね?」
耳元で囁かれるとゾクゾクとしてしまう。防御が緩んだ隙にボタンが外され、首の咬合痕を隠したスカーフを取り去れば、前面がはだけられた格好となる。
ギルはジャレッドの身体を見て、唇の端を吊り上げた。
ジャレッドの首には最初に噛みつかれた喉仏の他に数箇所、肩や腕、両胸には乳暈ごと食べられたのであろうと思われる痛々しい歯形がくっきりとあった。そして、その周囲を飾るように紅い充血痕が散っている。
「一国の第二王子がこんなにいやらしい身体をしていると、皆が知ったらどう思われるのでしょうね?」
ギルはぷっくりと熱をもった乳首を捏ね回しながら、首筋を舐めて執拗に責め立ててくる。
新しめの傷はまだ塞がりきっておらず、舌先でほじくられてふたたび血が滲む。神経に触っているため敏感で、刺すように神経を抜けていく疼きが腰に届き、腹の奥がキュッと締まった。
「ふあっ、ン、ン、はあっ、お前・・・・・・悪趣味だぞ・・・・・・ッ」
とたん煽ったつもりもないのに、唇でやわやわと挟まれていた首筋に歯が当たる。
「こういった趣味があったわけではないのですが、クセになってしまったみたいです。ジャレッド様だって嫌いではないでしょう? 毎回泣きながら絶頂してる」
「・・・・・・そんなこと、アッ、や———」
乳首がつねあげられたと思うと、歯が食い込んできた。じっくり、じわじわと、灼熱 を押し当てられたみたいに傷口が熱くなる。
「ふうっう・・・・・・あ、あ、アア・・・・・・」
ギルは歯を離し、今度は血のついた傷口の上を舐める。ねっとりとした刺激が傷にぴりぴりと沁みた。
「い、いた・・・・・・い」
「でもほら、もうこんなに」
張り詰めた股間を撫でられ、ビクンと腰が跳ねた。ギルの手は下穿きの内側に潜りこみ、ジャレッドのペニスに触れる。だらだらと期待を滴らせた先端の蜜口を親指で弄り、時折、爪を立てて引っ掻く。
「可愛い、たくさん溢れてきてトロトロだ」
にゅちにゅちと音が鳴り、恥ずかしくて、ジャレッドは声を懸命に押し殺して腰を震わせた。
そのままペニスを扱かれ、乳首と咬み傷、三点をいっしょに責められると、ジャレッドは呆気なくのぼり詰めた。
「あ、あ、出るッ」
腰を突き出し、ジャレッドは大きな手のひらに自身を擦り付けて熱を放つ。どろりと溜まった白濁を満足げな顔で奥の窄まりに塗り込み、ギルはツプンと指先を沈めた。
「ひ、あ」
「ジャレッド様のここはいつ触っても柔らかい、可愛い」
「・・・・・・うるさい・・・・・・わかってるなら、はやくしろ」
ギルに愛され慣れたそこは、いつだってギルの太く逞しい男根を受け入れられるようになってしまった。
精液を馴染ませただけで身体の向きを変えられ、ジャレッドは「壁に手をついて」と促される。言われるがままに手をつくと、割り広げられた双肉の間に性器があてられ一気に貫かれた。
「アッ・・・・・・!」
びくんと大きく跳ねた腰を押さえつけ、ギルのモノはずるずると引き抜かれ、ふたたび深く入り込んでくる。
「んぐ・・・・・・ンン、あ、ああッ」
「気持ちいいですか? ジャレッド様」
ギルは後ろからジャレッドを揺さぶり、突き上げる。あらぬ場所での行為を急いているのだろう、いつもよりもギルの抽挿は激しい。
奥を叩きつけられる快感に身悶え、ジャレッドに答える余裕もなかった。
だが答えるまでもなく、ギルから伝い落ちる汗が、ジャレッドと一緒くたになって光り輝く。
その時、不意にギルがジャレッドの口を塞いだ。
「ンぐッ」
手のひらが口に押し当てられ、呼吸が上手くできなくて苦しい。ギルはそのままジャレッドを突き上げた。吐く息が堰き止められると、爛 れ落ちそうな快楽がどろどろと腹の中に溜まる。
「しっ、人が近くにいます」
そう言われてすぐ、人の声と足音が聞こえ、それに感じてしまったように後孔がキュウウと締まった。
「ん・・・・・・ふ・・・・・・」
ジャレッドは腹の奥に放たれる熱を感じながら、自らも全身を痙攣させ、はしたなくカフェの外壁を汚し果てていたのだった。
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