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彼の名前は成瀬 優斗 さん。イケメン。
そう、彼はすごくイケメンなんだ。アッシュブラウンの髪に少しタレ目な目、高い身長…。身長に関しては僕が小さいだけだけど。
彼は司書で、いつも真ん中にあるカウンターに座っている。僕が入館したことに気づくと成瀬さんはいつもにこっと笑いかけてくれる。
その笑みに僕の心臓は撃ち抜かれる……。
彼、というように成瀬さんは男で、僕も男。でも僕は彼が好きだ。
彼との出会いは、半年前――僕が2年生に上がる少し前のこと。
高校に入ってから1週間に1回、僕は電車に乗って心療内科に通わされていた。僕はもういいよって言ってるんだけど、父さんが僕の声を諦められないらしくて。
上越北高校前の駅に乗って、養父岬駅へ。降車したらそこからバスに乗る。なかなか大移動だけど、心療内科がそこしかないから仕方ない。
七瀬心療内科クリニックは若い男の先生が経営していて、それなりに繁盛しているみたい。俗に言う美人な先生。
そしてその近くに養父岬中央図書館があるんだ。随分昔に建てられた図書館で、見た目も然ることながら中もボロボロ。
僕が小学生の頃に1度だけ行ったことあるけど、児童書が少ないから楽しくはなかった記憶。
そんなある日、僕はいつもの様に養父岬駅を降りてバスに乗った。けれど、急に…行くのが嫌になって。心療内科前の停留所で降りたけど、そのまま駅の方に徒歩で引き返してしまった。
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