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第4話
「違う名前でアダルト向けの作品に出るという仕事なんですが、僕はマゾヒスティックになっていく男の役を演じるように言われていて。こういう役は初めてで、口に出すのも恥ずかしくてどうしていいのか先輩にも相談出来なくて」
「難しい役どころですね」
そうとしか返せなかった。
けれど、困り果てているはずのその人の心の奥底に何かがあるように思えた。
やった事のない仕事をする事に戸惑いながらも、どこかでそれを楽しみにしているような、そんな雰囲気を感じたのだ。
「あ、あの、今から台本を読んでみますので、少し聞いていて頂けませんか?」
「承知しました」
「ありがとうございます……!!」
言葉と共に吐いた息は、どこか弾んでいるように聞こえた。
そして、彼はその低く美しい声で演技を始めた。
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