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第6話
「あぁ……っ、人前でこんな演技をすると、こんなにも興奮するんですね。身体が熱くなって……何も考えられなくなる……」
彼と私とを隔てる磨りガラスの引き戸。
そこに人の形がはっきりと見えたのは、初めての事だった。
依頼主が私のすぐそばまで来ている。
けれど不思議と危機感はなく、それよりも彼がこの引き戸を開けて中に入っては来ないのかと変な期待をしてしまっていた。
「ん……ッ、あぁ……っ……!!!!」
彼はその場でいそいそと下半身を露出させると、ガラス越しではあるものの私の目の前で自慰を始めた。
大きな身体が揺れ動く様を、私はただ見つめていた。
彼が甘い声を上げる度、先程読んでくれた世界が広がってゆき、私を呑み込んでいくような感じがした。
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